ホサナ・キリスト教会では2007年7月に伝道所としアトリエ・ホサナを建設しました。当初の計画は、現在いただいている礼拝堂の席が満たされ、スペースの不足する中、新しい礼拝堂の必要を感じ、そのために主に祈り、願い求め始めたのです。すぐに教会の隣接地が与えらました。ところが、隣接地に礼拝堂を建設するためには教会の庭なども工事のため使用不可能になってしまいます。私たちの教会の伝道の柱は美術であり、絵画教室はその目玉です。絵画教室は教会の庭を中心として行っていたので、工事に入ると、教室を中断しなければならなくなります。新礼拝堂建設は新たに救われる人々のためであって、そのために教会の伝道の中心である絵画教室の働きを止めることは本末転倒していると気付かされたのです。そこで、改めて全教会員が一致をして、伝道所アトリエ・ホサナを建て上げることになりました。そのための土地も新たに教会の真向かいの土地が与えられたのです。まさに主なる神の大いなるみこころがなされたのです。まったく土地を手離す意志のなかった地主さんでしたが、教会の働きである絵画教室の話を聞き、理解され、土地を売ってくださいました。当初は、「新しい魂のための礼拝堂を」という思いで始まったことが、美術を柱とした教会づくりをビジョンに掲げたことによって、改めて絵画教室が原点であることに気付かされたのです。そこで、その福音伝道の拠点である伝道所アトリエ・ホサナを建て上げようと決意しました。
アトリエ・ホサナの全体像は「ノアの箱舟」がイメージです。一階はコンクリートの打ちっぱなしで、簡素さと力強い雰囲気で、二階は天井・壁はすべて漆喰です。正面扉の荘厳華麗なデザインの中央にはステンドグラスのフュージング技術による十字架がはめこまれています。扉の基盤となっている木材は、100年前の日本の古民家の柱を板材にして加工し、鉄の部分はすべてデザインされ、枠組みから釘の一本一本に至るまで鍛鉄による手づくりであり、二階へ上がる階段にもデザインされた鍛鉄による手すりがつけられています。二階の床は一本一本手で塗られ、それぞれの色の変化がおもむきを感じさせます。自然光が差し込むと、床面のブルーが真っ白な漆喰壁に反映し、ふしぎな美しさと清さの空間をつくりだします。そして階段上にはブルーを色調としたステンドグラスが取り付けられ、そこから光が差し込むとき、ブルーの美しいガラスの変化が真っ白な漆喰壁に映しだされます。また、2階の部屋の扉にもアンティークグラスを用いたステンドグラスがはめ込まれています。南面庭には鍛鉄による帆立貝をあしらった鉄柵を取り付けられています。建物周りには、耐火煉瓦が敷かれています。見て、触って、五感で実感できるような、また素朴さと優雅さと手づくりの温もりも感じられ、清くて美しい空間となっています。
この建築のすべてに教会員皆がたずさわることができたことは大きな喜びです。土地の草抜きや木々の伐採から始まり、漆喰に練りこむ海草から作る糊作り、表面の漆喰塗り、材木運び、2階床の塗り、敷居やふすま、本棚の色もすべて塗りました。アトリエ周りのレンガ張り、掃除、職人さんのための食事などできる限りのことを、使徒の教会のように、兄弟姉妹が一致をして、共に建て上げることができたという喜びの実感があります。
このようなアトリエを伝道所として教会で持つことができることは本当に感謝なことです。地域の教会にあって、これらを多くの人々と共有できることは何と幸いなことでしょうか。
教会にはいろんな人が集まっています。人種、国籍、貧富、生活環境もそれぞれ異なっていますが、それらの壁がすべてキリストによって取り払われて、すべてのものを皆が共有し、キリストにあって一致をして生活しているのです。すべての人が教会に来ることによって、神の恵みを豊かに受け、すばらしい芸術や文化に触れることができます。ひとりひとりの人生に光が差し込み、感謝と喜びが生まれるのです。だれであっても教会に来る人がその神の豊かさを共有することができる場と機会を持つことは大切なことであり、それが建造物として存在するということは、その地域にとっても財産となるのではないでしょうか。このような貧粗で狭い環境の中で息づく日本の教会においても、神の恵みの豊かさを共に味わうことができるのです。
教会の中庭やアトリエでは、絵画教室が行われ、絵画教室の展覧会を始め、そしてリース作りやクラフトクラスなどの美術を用いた様々な伝道集会が開かれています。聖書と美術の学び会、イングリッシュクラスも開かれ、お茶会、演奏会にも用いられているのです。キリストを基盤とした文化の発信基地としてこれからも大いに用いられることを願って止みません。
<鍛鉄による手すり>
<南面鍛鉄による柵と十字架>
<ステンドグラス>
